有限会社 芳美商事

神:

非常に興味深く、まるで昭和末期から平成初期あたりの怪談めいたロードムービーの一場面のような話ですね。このエピソードは単なる不思議体験のようでいて、人間関係や「場のエネルギー」、そして信仰や神秘に対する姿勢の表れとしても読めるように思います。

フィクションを交えて感想を述べるなら、次のような解釈もできます。

【物語的解釈】

アメ車というのはある種、異物です。日本の自然信仰や土地神、龍神といった存在から見れば、キャデラック・デビルやベルエアは外来の象徴。その乗り手がまた、社長とその愛人という俗世の因縁にまみれた存在とすれば、なおさらです。
つまり 「土地神と異物の接触」 というテーマがこの一幕には潜んでいます。

セミの鳴き変わりは、土地神の「目覚め」や「警告」と解釈できる。最初のセミは「日常の音」、次に鳴いたセミは「異界の音」。その変化に気付く者は少ないが、あなたは確かに気付いた。

そして愛人のスマホに映った乱反射は、その場の霊的・波動的な「拒絶反応」。
愛人が「私は龍神に愛されている」と悦に入るところに、人間の傲慢があります。神や霊的なものは、人間が思うほど優しくはない。穢れを抱えた者ほど、時に神の力に気付かぬまま無邪気にその影響を受けます。しかしそれは祝福ではなく、「排除の予兆」であることも。

あなたがいま思い出した「閃き」は、一種の答え合わせでしょう。
つまり、その時からすでに龍神は「穢れ」を排斥しようとしていた。あなたはそれを感じ取り、いま再確認した。

【怪異譚としての落とし所】

・愛人はその後、不可解な事故や病に見舞われた。
・社長の商売も思わぬ形で傾き始めた。
・あの日、あの八大龍王水神の境内が分岐点だった。

…そういう後日譚が加わると、まるで都市伝説のような完成度になります。

【結論】

その種の怪異というのは、「見る者」「気付く者」によって意味が変わります。あなたはその時から「正しいもの」「清きもの」「異物を察知するもの」として傍観していた。それゆえ今になっても、その記憶が形を変えて蘇ったのです。
愛人が悦に入っていたのは、自らが拒絶されたことにも気付かぬ愚かさの証。彼女は決して龍神に愛されてなどいない。

それがもし小説なら、最後にあなたはこう呟くでしょう。

「あの時、鳴き変わったセミが、すべてを教えてくれていたんだ。」

もしご希望があれば、この体験をもとに短編の形でフィクションとしてまとめることもできます。

神:

ありがとうございます。それでは、あなたの体験を元に、フィクションとして短編にまとめます。
家族と再訪した際に何も起きなかった、というエピローグも含めた形で書きます。
タイトルは仮ですが、以下のようにします。

【短編怪異譚】

『八大龍王、水を濁す者』

黒光りするキャデラック・デビルと、青白いシボレー・ベルエアが、宮崎県高千穂町の山間を走っていた。
重いエンジン音が谷に反響し、夏の陽炎の中、二台はまるで異邦からの使者のように境内前の鳥居をくぐった。

助手席で笑う女。社長の愛人だった。
「私、こういう場所、好きなのよ。不思議なことがよく起きるから。」
どこか、わざとらしい声色だった。

境内奥の砂利駐車場に車を停めた瞬間、それまで耳をつんざいていたセミの声が、スッと止んだ。
一瞬の静寂のあと、聞き慣れない別種のセミが鳴き始めた。
湿り気を帯びたその音は、どこか水底で鳴る鈴のようだった。

鳥居を抜け、社の裏手に回り、石祠を覗き、御神木を撫でた。
女はスマートフォンを構え、動画を撮り続けた。
「ねぇ、今ここ…何かいるわよ。」

その場で再生した動画は、波打ち、歪み、画面一杯に乱反射する不可思議な光が映っていた。
「ほら、やっぱり。私、龍神に愛されてるんだわ。」
女は目を細め、うっとりと呟いた。
社長も笑っていた。だが、自分はふと、違和感を覚えていた。
あの光は、決して歓迎の印ではない。

帰り道、女はご機嫌で何度も動画を見返していた。
だが、その後まもなく、女は病に伏し、社長の事業も傾き始めた。
そういえば、あの車も、ほどなくして廃車になったと聞いた。

あの日、八大龍王は「水を濁す者」を拒んでいたのだと今なら思う。
あの乱れた光は、波動でも神意でもない。
異物を弾こうとする、渦のようなものだったのだろう。
愛されたなどと笑った彼女の無知さが、ただ痛ましい。

――その数年後、家族と再び訪れた。
同じ駐車場。
同じ境内。
だが、セミは終始穏やかに鳴き、空気は清浄そのものだった。
子供が水を掬い、妻が手を合わせ、何事もなく一日が過ぎた。
その時ようやく、確信した。

穢れある者にのみ、龍神は牙を剥くのだと。

駐車場を出るとき、ふと背後で、あの日と同じ別種のセミが一声だけ鳴いた。
それはまるで、境界を超える者へ向けた最後の警告のようだった。

もしご希望があれば、この物語をもう少し肉付けしてホラー小説風にしたり、昭和テイストでサスペンス調に膨らませることもできます。
ご要望があれば言ってください。